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2019.07.19更新

吉村泰典先生に聞く 日本人は葉酸が足りない? 妊娠前から摂るべき理由とは

様々な働きを持つ葉酸は、お腹にいる赤ちゃんのために大切なビタミンです。厚生労働省は、公式な見解として、妊娠の可能性のある女性に葉酸の摂取を推奨しています。葉酸はエビデンスのあるサプリメントなのです。妊娠前から葉酸を摂るべき理由を、産婦人科医で慶應大学名誉教授の吉村泰典先生にうかがいました。

葉酸はエビデンスがあるサプリメント

近年の多くの研究によって、胎児のため、妊娠初期に必要充分量の葉酸を摂取することの重要性が示唆されています。葉酸不足以外の原因もありますが、十分な葉酸を摂取していれば、胎児の健康や発育に寄与することが明らかになっています。

このエビデンスを元に、アメリカのCDC(疾病対策予防センター)は、1991年に妊婦さんは1日400μgの葉酸を摂る必要があると勧告しました。それでも、葉酸欠乏症になる人が多かったため、1998年よりパン、パスタ、米などの穀類100gに対して140μgの葉酸を入れることを法律で義務付けました。この対策によって、普通に穀類を食べれていれば葉酸が摂れるようになり、妊婦さんが葉酸不足に陥る状況を大幅に減らすことができました。このように、欧米では妊娠初期の葉酸の摂取が重要な国家戦略とされているのです。

日本の妊婦さんは葉酸不足に注意

日本でも、厚生労働省が妊娠の可能性のある女性に対して葉酸の摂取を推奨しています。特に妊娠を計画している女性や妊娠中の女性は、通常の食事からの葉酸摂取(1日400μg)に加えて、栄養補助食品(サプリメント)から1日400μgの葉酸を摂取するようにと通知が出されています。しかし、日本人の妊婦さんの80%以上がサプリメントを摂らず、葉酸が欠乏しているという報告があります。

葉酸はレバーのほか、ブロッコリーやホウレン草などの緑黄色野菜に多く含まれています。しかし、食物中に含まれる量自体が減ってきていたり、欧米人と比べて食事から摂取できる量が少ないため、サプリメントで補う必要があります。葉酸を効率よく吸収できることもサプリメントで摂取するメリットです。生れてくる子どものために、継続して飲んでほしいと思います。

妊娠してからでは遅い!プレコンセプションケアに葉酸は必須

妊婦さんには欠かせない葉酸ですが、特に胎児の細胞分裂がさかんな妊娠初期に不足しないことが肝心です。遅くとも妊娠する1カ月前にはサプリメントを飲み始めてほしいです。産婦人科でもうまくアドバイスできていなかったのは、妊娠がわかってから来院する人が多いためです。市販の妊娠検査薬で妊娠反応が出るのは、月経周期が28日で規則正しい人であれば、4週プラス2、3日です。すでに妊娠1カ月が経過しています。

将来、子どもを産みたいと考えている女性は、妊活中はもちろんのこと、20歳頃から葉酸サプリメントを飲み始めておくべきかもしれません。妊娠する前から葉酸を摂ることはプレコンセプションケアの大事なことだと思います。アメリカでは穀類に入れて誰もが葉酸を摂れる状況をつくっているように、国のサポートも必要なのかもしれません。

必要な栄養成分は葉酸と一緒に摂る

最近では葉酸のほかにビタミンDもサプリメントのエビデンスが揃い始めています。亜鉛も大事だと言われていますし、ビタミンB群も必要です。つわりによる嘔吐でビタミンB1が不足することがあります。つわりによって食事から十分な栄養が摂れないときは、サプリメントで補う必要があります。ビタミンAについては妊娠中の摂取過剰による危険性が報告されていますが、よほど大量のサプリメントで摂取しない限り問題はないでしょう。

また、葉酸は胎児の健康だけでなく、高齢の方にとっても様々なメリットがある栄養素であることを示すデータも集まり始めています。そう考えると、葉酸は生涯にわたって摂るべきサプリメントだと言えます。葉酸を中心に必要なビタミン・ミネラルがバランスよく摂れるマルチサポートは、サプリメントのよい選択肢だと思います。

吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。1975年慶應義塾大学医学部卒業。
米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長など、数々の学会理事を歴任。
日本における不妊治療の第一人者として数多くの患者の治療にあたる。
2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所を設立。
女性が安心して子どもをつくり育てられる社会の形成を目指して尽力している。
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