MENU
MENU
2019.07.12更新

吉村泰典先生に聞く 知っておくべき不妊治療の適齢期

高齢出産のニュースも聞かれ、不妊治療によって月経があれば妊娠できるというイメージを持っている人も少なくありません。しかし、それは大きな誤解。不妊治療にも適齢期があります。産婦人科医で慶應義塾大学名誉教授、不妊治療の第一人者である吉村泰典先生にお話をうかがいました。

不妊治療は35歳までに

今、マスコミなどで40代後半の女優さんが体外受精で子どもを授かったというニュースが聞かれるようになりました。いくつになっても妊娠できるだろうと誤解している人も多いかもしれません。しかし、体外受精であっても妊娠には適齢期があります。生殖年齢は昔から変わりません。不妊治療を受ける場合も25歳~35歳が最も適しています。35歳以降は妊娠率が大幅に下がります。

例えば、女性が40歳のカップルで子どもができる確率は、体外受精を受けたとしても10組に1組。45歳を超えると100組に1組しかありません。40歳を超えると非常に妊娠しにくくなり、妊娠をしても流産してしまうことが多くあります。40歳で4人に1人、45歳では3人に1人が流産してしまうと考えてもいいでしょう。流産のうち7~8割が染色体異常で、これは自然淘汰であると考えられています。

原因は男女フィフティ・フィフティ

不妊は女性に原因があると思われる人が多くいますが、これも大きな間違いです。原因は、女性側と男性側のどちらも持っている可能性があります。WHOのデータによると、精子の数が少ない、運動性が悪いなど、男性に4~5割の原因があると見られています。ですから、不妊検査は女性だけではなく、男性と共に受けることが必要です。

不妊にはいろいろな原因が考えられます。女性側の検査は、項目が多く期間を要し、痛みを伴うものもありますが、男性は精子を採取するだけです。簡単に終わるので、男性の検査を先に済ませることが大事です。検査結果によって、治療方針はまったく異なります。人工授精で済むこともあれば、体外受精や顕微授精をしなければならないケースもあります。

不妊治療の技術はこの10年、20年はそれほど進歩していません。しかし、体外受精、顕微授精ができるようになって30年近く経ち、治療のクオリティは非常に高くなってきています。今ではどこの病院へ行っても、標準的な治療が受けられるようになりました。特に日本は不妊治療が受けられる施設数は世界一です。ですから、できるだけ早く検査をして、適切な不妊治療を受けることが大切。年齢が若いほど妊娠しやすく、簡単な治療で済むことが多いからです。

不妊治療はパートナーと共に

当たり前のことですが、子どもは二人でつくるものです。ですから、不妊治療はパートナーと共に歩むという姿勢がとても大事です。体外受精をして受精卵を戻しても、妊娠できなかったということもあります。そのことに女性はとても苦しみます。鬱(うつ)になる人も少なくありません。そういうときは、男性のサポートがとても大切になります。精神的な支えが、男性側に最も要求されているのです。

大事なのは企業の理解

不妊治療がたいへんな理由の一つは、自分のペースで通院ができないことです。月経周期で治療を決めるため、先の予約はできません。遅くても1週間後、早ければ3日後に病院へ来てくださいと言われることもあります。会社に勤めていたら、3日後に休みますとは言いにくいと思います。働きにくい状況になり、不妊治療のために仕事を辞めなければならなくなるかもしれません。ですから、企業には不妊治療に対して理解してほしいです。私が国にお願いしているのは、不妊治療のために1カ月に5、6回の半日休暇が取れる制度をつくることですが、それも企業の理解がなければ行きわたりません。

妊娠するために最も重要なものは職場や社会の環境です。企業には不妊治療をサポートするシステムづくりが必要です。これが、経済産業省が推進している「健康経営」です。従業員が健康に職業を続けられる環境をつくることが、企業の生産性向上に繋がります。その取り組みをさらに推し進めてほしいですね。

吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。1975年慶應義塾大学医学部卒業。
米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長など、数々の学会理事を歴任。
日本における不妊治療の第一人者として数多くの患者の治療にあたる。
2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所を設立。
女性が安心して子どもをつくり育てられる社会の形成を目指して尽力している。
——— Keyword ———キーワード