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2019.07.12更新

吉村泰典先生に聞く 初経を迎えたら産婦人科に行く理由

世界の中でも遅れているといわれる日本の性教育。今日の少子化も学校での性教育に問題の一端があるようです。将来、赤ちゃんを授かるために、思春期から知っておきたいケアについて、産婦人科医で慶應義塾大学名誉教授、内閣官房参与でもある吉村泰典先生にお話をうかがいました。

月経と妊娠の知識

日本の中学・高校の性教育は、避妊や性感染症についての内容が中心で、妊娠するための知識を教えてきませんでした。今日、不妊で悩んでいるカップルが多いのは、この教育に大きな問題があると思います。欧米では娘が初経を迎えると、母親が産婦人科に連れていきます。月経はどういうものなのか、また妊娠はどうやってするのかを、ドクターに教えてもらうのです。

知っておきたいピルのこと

月経痛を緩和するために低用量ピルを飲むことも必ず教えています。欧米ではホルモンの変動を安定させて、月経をコントロールするピルは、生活設計のための薬であると考えられているのです。ですから、中学生や高校生でピルを服用する割合が圧倒的に多くなっています。しかし、日本にはピルに対して誤った考え方があります。ピルを飲むのは避妊のためという見方をする人が多いのは、とても残念です。

ちなみに、欧米では1970年頃からピルが服用されています。日本では1999年にようやく低用量ピル(経口避妊薬)が解禁されました。欧米から約30年の遅れがあります。その頃、ドイツをはじめヨーロッパ各国では、すでに連続投与を行っていました。連続投与をすれば、その間は月経が1回も起りません。一般の方々だけでなく、産婦人科医にもまだ月経は毎月なければいけないと考えている方がいます。だからこそ、性教育は大事なのです。

月経は毎月なくてもいい

月経は毎月起らなくてもいいのです。さらに進めて考えると、月経は起こる必要はありません。その理由は、月経が起こる仕組みを知れば、納得できます。例えば、セックスをして受精、着床して妊娠をすれば、月経は起こらなくなります。反対に、受精、着床しなければ月経が起ります。つまり、妊娠しなかった結果として起るわけですから、必ずしも起こらなくてもいいものなのです。女性は月経周期でホルモンの変化が起り、それに伴う病気が非常に多いのです。

子宮内膜症は30~34歳がピークといわれていますが、近年は思春期にも発症する例が見られます。子宮内膜症は月経の回数に伴って発症する確率が高くなる病気です。つまり、子宮内膜症はピルを飲んでいれば、予防をすることもできます。

また、月経痛は仕方ないと思っているかもしれませんが、痛みはないに越したことはありません。受験やスポーツの試合などに月経は起ってほしくないですよね。医学部受験の予備校では女子学生にピルを推奨している例もあります。

海外のアスリートは、月経痛の緩和や月経を回避するためにピルを飲むことは当たり前になっています。ピルはドーピング薬物にはあたりません。パフォーマンスを発揮したいときにピルを飲むことは、もはや常識なのです。

プレコンセプションケアの考え方

月経のことをよく知らないままで、妊娠の適齢期(25~35歳)を迎える方がたくさんいます。そうなると、子どもを授かりたいと思って妊活を始めても、なかなかうまくいかないことがあります。妊娠に気づいて初めて産婦人科を受診する人も多いでしょう。そこで、初めて子宮内膜症などの病気が見つかることも少なくありません。

こうしたことから、今、注目されているのが「プレコンセプションケア」です。プレ=前、コンセプション=受胎を意味するので、文字どおり妊娠する前の段階から自分の健康をケアすることを言います。妊活を始めるその前から、将来の妊娠に備えて健康を維持することはもちろん、月経や妊娠に関する正しい知識を持つことはとても重要なのです。

将来、子どもを授かるためのケアとして、できるだけ若いときから産婦人科にかかることが大切だと思います。そして、世の中のお母さんたちには、娘さんが初経を迎えたら、ぜひ産婦人科へ連れて行ってあげてほしいです。

吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。1975年慶應義塾大学医学部卒業。
米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長など、数々の学会理事を歴任。
日本における不妊治療の第一人者として数多くの患者の治療にあたる。
2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所を設立。
女性が安心して子どもをつくり育てられる社会の形成を目指して尽力している。
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