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2019.07.12更新

吉村泰典先生に聞く 学校では教えてくれない妊娠適齢期

将来、子どもをつくりたいけれど、まだ先でも大丈夫と考えていませんか? 確かに、30代後半や40代で子どもを産んでいる人もいます。しかし、妊娠しやすい適齢期は思っているよりも早く短いかもしれません。意外と知られていない妊娠の適齢期について、産婦人科医で慶應義塾大学名誉教授の吉村泰典先生にお話をうかがいました。

生殖年齢は延びていない!?

現代の女性は平均12歳前後で初経を迎えます。戦前は13~15歳で初経を迎えていたので、当時とくらべると3年ほど早くなっています。しかし、閉経の年齢は平均50歳前後と戦前とほどんど変りません。その間、平均寿命は30年ほど延びて、いつまでも若々しい女性がたくさんいらっしゃるにもかかわらず、閉経の年齢は戦前の食料事情が苦しい時期とほとんど同じです。つまり、女性の生殖機能は昔も今も変わらず、妊娠の適齢期は25~35歳なのです。

昔と今をくらべて最も違うのは、生涯分娩の数が大幅に減っていることです。昔は4~6人の子どもを持つことが普通でしたが、今では1~2人が平均です。初産の平均年齢も遅くなり、30歳を超えました。そうなると、現代の女性は生涯400回前後の月経があることになります。出産経験がなければ500回にもなる方もおみえになります。妊娠・授乳中は月経が止まるため、昔の女性の生涯月経は少ない人で150回前後だったと思われます。つまり、現代の女性は、それだけ月経に晒されている期間が長いのです。

適齢期の子宮内膜症が増えている

月経周期によってホルモンの状態は非常に大きく変動します。妊娠・授乳期は月経が止まりますが、それがなければ長期にわたってホルモンが変動し続けることになります。女性にはホルモンの変動に伴う病気がとても多くあります。子宮内膜症や子宮筋腫は、ホルモン依存性の疾患といわれています。近年の少産少子・晩婚晩産によって、これらの病気が妊娠を希望する女性に大きな影響を与えています。

少産化と晩産化によって起こりやすい典型的な病気が、子宮内膜症です。子宮内膜症は、この15年間で約2倍となり増加傾向にあります。性成熟期の20~30代で発症することが多く、ピークは30~34歳といわれており、妊娠の適齢期(25~35歳)とちょうど重なります。

また、子宮筋腫ができやすい年齢は35~45歳です。昔は40歳までにお産をする女性が多かったので、この時期に子宮筋腫ができても特に問題はありませんでした。しかし、現代の女性の初産の平均年齢は35歳前後です。つまり、子宮筋腫が最もできやすい時期に妊娠することになるのです。

妊娠適齢期は25~35歳

いくつになっても、月経があれば妊娠できるという考えは誤りです。体外受精であっても、40代になれば妊娠率は大きく下がります。女性の生殖年齢は戦前の昔から変っていません。にもかかわらず、近年の少産少子・晩婚晩産によって、現代の女性は非常に妊娠しにくい環境に置かれています。若い人にこそ、それを知ってほしいです。

今も昔も、妊娠の適齢期は25~35歳です。私は、それが浸透していないのは、中学校・高校の教育に問題があると感じています。保健体育の教科書に書かれているのは、避妊と性感染症のことが中心です。妊娠の仕組みは書いてありますが、どのようにしたら妊娠ができるかは書かれていません。正しい妊娠・出産の知識として、女性には妊娠の適齢期があることを、女性のみならず男性にも教えていかなければなりません。

将来、赤ちゃんを授かるために、妊活の前から始める健康づくりを「プレコンセプションケア」と言いますが、性教育も含めた思春期からの取り組みがとても重要なのです。

 

吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。1975年慶應義塾大学医学部卒業。
米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長など、数々の学会理事を歴任。
日本における不妊治療の第一人者として数多くの患者の治療にあたる。
2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所を設立。
女性が安心して子どもをつくり育てられる社会の形成を目指して尽力している。[参考資料]
日本産婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮内膜症
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9
日本産婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮筋腫
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8
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