
不足している栄養を手軽に摂れるサプリメント。健康や美容の維持・改善をサポートするさまざまな機能性や成分も期待されます。しかし、毎日、何気なく飲んでいたり、飲み忘れたり、ほんとうに効果が出ているのかわからなくなることはありませんか。そこで、サプリメントをできるだけ効果的に使う方法を、薬学博士の井手口直子先生にアドバイスしていただきました。
食事が大前提、よい油が大事です
私たちのからだは食べたものでできています。その意味では、まず何をどれだけ食べるかが大切です。厚生労働省が望ましい食生活として1日に何をどれだけ食べたらよいかを表した「食事バランスガイド」には、1日に食べるとよい目安として多い順に、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の料理区分で示されているので参考にしてみてはいかがでしょう。
厚生労働省「食事バランスガイド」
基本はバランスのよい食事です。そのうえで、からだに悪影響のある物質は避け、体内から排出することも必要です。食生活で心がけたいのは、よい油を摂ることです。そこで、注目されているのが中鎖脂肪酸油です。一般的な油(長鎖脂肪酸油)とくらべて速やかに肝臓に運ばれるためエネルギーとして使われやすく、体脂肪がつきにくいとされています。足りない栄養素はサプリメントで補うという考え方で取り入れるといいでしょう。
ビタミン・ミネラルは不足しがち
5大栄養素といわれる、たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル。日頃の食生活で不足しがちなのがビタミンとミネラルです。たんぱく質、炭水化物、脂質はエネルギー源やからだの組織をつくる働きをして、ビタミン、ミネラルがからだの調子を整える働きをします。ですので、ビタミン・ミネラルが不足するとあらゆる病気の発病や悪化につながる恐れがあります。ビタミン・ミネラルは、野菜、海藻、肉や魚から摂ることができます。しかし、ひとことでビタミン・ミネラルといっても何種類もあります。食事からすべての栄養素を摂ることは、よほど意識していないと難しいことです。また、食物に含まれる栄養素の量も昔とくらべて減っていたり、旬の時期以外に流通する野菜が増えているため、野菜をたくさん食べていてもビタミン・ミネラルが十分に摂れているとは言いきれません。
食事で足りない栄養素は、サプリメントで補給するといいでしょう。外食が多い人はどうしてもビタミン、ミネラルが不足しがちになります。まず、食品をバランスよく組み合わせた料理を選び、そこにビタミン、ミネラルのサプリメントをプラスしていくといいでしょう。マルチビタミン、マルチミネラルなど、ベーシックなサプリとしてさまざまな商品が市販されていますので、そのなかで自分に合うもの選びましょう。
女性に多い鉄欠乏症
鉄欠乏症は特に若い女性に多い症状です。ミネラルは汗などで排出され、月経でも多くの鉄分が失われています。女性は積極的に鉄を摂るといいでしょう。鉄は、肉や魚、野菜などに多く含まれています。鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」のほうが、ひじきやほうれん草、プルーンなどに含まれている「非ヘム鉄」よりも吸収力が高くなっています。鉄を摂るには「ヘム鉄」を含む食品がベターということになりますが、どちらもビタミンCやたんぱく質と同時に摂取することで、体内での吸収率が高まります。また、辛いものや酸っぱいものと一緒に食べると胃を刺激するので吸収がよくなると言われています。意識して上手に鉄分を摂りましょう。
スーパーフードを取り入れてみる
栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品、あるいは栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品をスーパーフードとして定義しています。スーパーフードという概念が生れたのは1980年代のアメリカです。一般的な食品とサプリメントの中間にあたる存在で、料理の食材としての用途と健康食品としての要素をあわせもつことが特徴です。近年、健康意識の高い人たちの間で話題になっていますが、一過性のブームで終わらせずライフスタイルとして定着させることを目的に、一般財団法人日本スーパーフード協会が発足し、私も理事を務めています。
日本スーパーフード協会が特に重要だと考えているのが「プライマリースーパーフード10」として認知されている10種類。スピルリナ、アサイー、カカオ、カムカム、ココナッツ、クコ実、ブロッコリースーパースプラウト、マカ、チアシード、ヘンプシードです。このほか、雑穀、海藻、山菜、茸などの日本の伝統的な自然食品にも、協会がスーパーフードとして認めているものがあります。普段の食事にスーパーフードを組み合わせて、さらに足りないものはサプリメントで補うことで栄養のバランスが整えやすくなります。サプリメントもスーパーフードも一過性のものではなく食生活の一部として、ある程度、継続することが重要です。

帝京平成大学薬学部教授。薬学博士。
帝京大学薬学部薬学科卒業後、望星薬局勤務を経て、新医療教育企画(現・新医療総合研究所)を設立、現在は顧問を務める。日本大学薬学部専任講師を経て2010年より帝京平成大学准教授、2013年より現職。所属学会は、日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会、日本地域薬局薬学会、日本カウンセリング学会ほか。近著に『基礎から学ぶ行動科学理論とその技法』(薬事日報社/共著)。