
妊婦さんに積極的に摂ってほしい栄養素「葉酸」。厚生労働省も妊娠中の摂取を推奨していて母子手帳にも載っているほど大切な葉酸はいったいどんな栄養素で、どんな効果があるのでしょうか? どんな食品に含まれていて、どのくらい食べなければいけないのでしょうか? 健康に赤ちゃんが育ってくれるように、葉酸についての正しい情報を知ってください。
別名「赤ちゃんのビタミン」! 葉酸とはどんな成分?
葉酸は、水溶性のビタミン「ビタミンB群」のひとつ。1940年代にほうれん草から発見され、ラテン語の「葉(folium)」と「酸(acid)」から「葉酸(folic acid)」と名付けられました。
この葉酸は、妊婦さん、赤ちゃんの健康維持に欠かせない重要な成分です。だからこそ葉酸は「赤ちゃんのビタミン」と呼ばれています。特に妊娠初期は、葉酸が通常よりも多く必要とされるとき。プレママは、自分の分プラス、赤ちゃん分の葉酸をきちんと摂取することが重大なミッションなのです。
もし、葉酸が不足したら赤ちゃんはどうなってしまうのでしょうか?
赤ちゃんの障害のリスクを下げるために、妊娠中は積極的に葉酸を摂取することがすすめられています。
赤ちゃん・ママにうれしいこといっぱい! 葉酸を飲む3つのメリット
葉酸の働きは主にふたつ。
⦁ 新しい細胞を作るサポート
⦁ 赤血球を作るサポート
この働きが赤ちゃんの身体づくりやママの健康に大健闘! 葉酸を飲むメリットを具体的に紹介します。
メリット① 赤ちゃんの先天性異常の確率が70%以上も減少!
葉酸を摂ることで、イギリスでは神経管閉鎖障害の発症率が70%以上、中国北部では約80%も減少したという研究結果が。そのほか、アメリカやカナダ、オーストラリア、ノルウェーなど数々の国でも、妊婦さんや妊娠の可能性がある女性に葉酸の摂取をすすめています。日本でも、赤ちゃんの先天性異常をなくすための取り組みがはじまっているのです。
メリット② ママの貧血予防に!
妊婦さんや授乳期は貧血になりやすい傾向あり。葉酸は赤血球を作るサポートをしてくれることから「造血ビタミン」ともいわれているので、ママの貧血予防にもぴったり。疲れやすい、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、耳鳴りなどを感じたら、ビタミンB12や葉酸を積極的に摂ってください。
メリット③ 巡り力アップで、健康と美容にてきめん!
血流が良くなることで、基礎代謝がアップしたり、生理が整ったり、肌がツヤツヤになることにも期待大! 葉酸は妊娠中だけでなく、女性にとってはいつだって大切な栄養素なのです。
葉酸を飲んだほうがいい期間は? 妊娠中はずっと飲むの?
理想は、妊娠前から葉酸をきちんと摂って、赤ちゃんができる準備として赤ちゃんが育つための栄養素をしっかり確保しておきたいところ。また、多くの先天性異常は妊娠10週目以前に発生するので、妊娠前4週から妊娠12週までの間は、意識的な葉酸摂取がおすすめです。
また出産後にも葉酸は大活躍。母乳はママの血液からできるので、葉酸の造血パワーが質の良い母乳づくりをサポート。もちろん、貧血予防にも役立ちます。さらに、葉酸の細胞作りをサポートする力が、産後の身体のダメージをフォロー。せめて授乳中は葉酸を摂り入れてください。
葉酸が多い食べ物は?
ほうれん草から発見された葉酸。その名前から野菜に含まれている栄養素のように思うかもしれませんが、野菜以外にも豆類や木の実、果物、肉類(レバー)などに含まれています。
野菜類(食品100g当たりの葉酸の含有量)
えだまめ | 260μg |
モロヘイヤ | 250μg |
芽キャベツ | 220μg |
なの花 | 190μg |
グリーンアスパラガス | 180μg |
ほうれん草 | 110μg |
豆類(食品100g当たりの葉酸の含有量)
納豆 | 120μg |
納豆(ひきわり) | 110μg |
ひよこ豆(ゆで) | 110μg |
木の実(食品100g当たりの葉酸の含有量)
ごま | 150μg |
くり(中国ぐり) | 100μg |
くるみ | 91μg |
果物(食品100g当たりの葉酸の含有量)
ライチ | 100μg |
いちご | 90μg |
アボカド | 84μg |
マンゴー | 84μg |
肉類(食品100g当たりの葉酸の含有量)
鶏レバー(肝臓) | 1300μg |
牛レバー(肝臓) | 1000μg |
豚レバー(肝臓) | 810μg |
魚類(食品100g当たりの葉酸の含有量)
うなぎ(肝) | 380μg |
たたみいわし | 300μg |
あんこうの肝 | 88μg |
ただし、レバーは葉酸の含有量は多いのですが、妊婦さんが過剰に摂ると赤ちゃんの先天性障害のリスクを上げるといわれている「ビタミンA(レチノール)」が含まれているので、食べ過ぎは禁物です。どの食品も葉酸以外の成分にも注意して食べましょう。
葉酸を食品から摂るときは、調理法にご注意を!
実は葉酸、3つの性質があります。
⦁ 熱に弱い
⦁ 水にとけやすい
⦁ 酸化しやすい
つまり、炒め物NG、揚げ物NG、茹でるNG、煮るNG。なるべく生で食べましょう。サラダや果物で食べるか、スープで流れ出た葉酸も一緒に摂るようにしてください。
葉酸は1日どのくらい摂ればOK?
厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準・2015年版」には、妊婦は食事から480μgの葉酸を摂ることがすすめられています。
葉酸の推奨量
⦁ 成人・子ども 240μg(0.24mg)
⦁ 妊婦 480μg(0.48mg)
⦁ 授乳婦 340μg(0.34mg)
しかし、この必要量を食べ物から摂れている妊婦さんはたった13%しかいないのだとか…。妊娠初期はつわりなどで、食事をするのが辛い時期も。赤ちゃんのためにも、葉酸のサプリメントなども検討してみてください。
厚生労働省も、
食品からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に低減することが期待できる と、食事にプラスしてサプリメントで葉酸を摂ることをおすすめしています。
※0.4mg=400μg
葉酸は摂りすぎたらどうなるの? 副作用はあるの?
葉酸の摂取量の上限は1日1000μgです。水溶性ビタミンなので、余分な分は尿から排出されるので、過剰摂取になることはほとんどありません。とはいえ、一度に大量に飲んだり、毎日過剰に飲み続けたりすることはNG。まれに、かゆみや蕁麻疹、発熱、呼吸障害が起きる場合があります。
実は、葉酸は食べ物から吸収しづらい栄養素
葉酸は水と熱に弱いので、茹でる、蒸す、炒めるなど、調理法によって失われてしまいます。また、食べ物から葉酸を摂取した場合、消化吸収をされて身体に利用されるのは全体の約50%だけ。野菜を頑張って食べているつもりでも、意外と吸収できていないんです。そのため食品から過剰摂取になることはまずないでしょう。
葉酸には「ポリグルタミン酸型」と「モノグルタミン酸型」のふたつの種類があります。ポリグルタミン酸型は、食べ物に含まれる天然の葉酸のこと。これがヒトの身体のなかで消化吸収されるときにモノグルタミン酸型に変わって、身体に吸収されます。つまり、モノグルタミン酸型の方が吸収されやすいということ。
そこで、注目されているのがモノグルタミン酸型の合成葉酸です。最初から身体に吸収されやすい形にした葉酸で、生体利用率は85%と高い割合です。厚生労働省がすすめている葉酸も、合成葉酸なのです。
厚生労働省が推奨! 葉酸を効率的に摂取するなら「サプリメント」が◎
赤ちゃんのために、口にするものには十分注意したい妊娠中。サプリメントに抵抗があるという人もいるのではないでしょうか?
世界的に妊娠中の葉酸摂取が推奨されていますが、今までに葉酸サプリメントによる副作用は発表されていません。厚生労働省も十分研究した結果、赤ちゃんの神経管閉鎖障害、胎盤早期剥離、流産、ママの貧血などの防止に有効としています。なので最低でも、妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月の間は、モノグルタミン酸型の合成葉酸をサプリメントで摂るように心がけてください。
また妊娠中は、葉酸だけでなく、その他のビタミン類や鉄分やカルシウム、亜鉛、たんぱく質など、多くの栄養をバランス良く摂ることが大切。食材選びや調理法、サプリメントなどを工夫してください。
葉酸を上手に摂りこむために、やってはいけない生活習慣!
葉酸をムダなく摂るために、ぜひ、生活習慣も見直してください。避けたい生活習慣は、
⦁ 喫煙
葉酸の吸収を妨害してしまいます。妊娠中はそもそも禁煙ですが、妊娠前から気を付けましょう。
⦁ 飲酒
アルコールを分解するときにも葉酸が使われてしまうので、妊娠前から飲みすぎには注意しましょう。
⦁ 高熱発作
妊娠初期はインフルエンザによる高熱や、高温のサウナなどは避けましょう。
葉酸は赤ちゃんにとってもママにとっても、そして女性にとっても大切な栄養素。少しでも早い段階で飲みはじめることをおすすめします。サラダやフルーツを意識的に食べたり、葉酸サプリメントを飲んだり、あとで後悔しないためにもしっかり葉酸対策をしてください。
■参考サイト・出典
・厚生労働省 eヘルスネット 「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html
・厚生労働省 難治性疾患克服事業・研究班 葉酸普及研究会 「葉酸Q&A」
http://yousan-labo.jp/faq/
「葉酸について」
http://yousan-labo.jp/yousan/
「妊娠を計画中の方へ」
http://yousan-labo.jp/woman/ninshin.php
・葉酸の推奨量> 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 1─6ビタミン(2)水溶性ビタミン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
・厚生労働省 「神経管閉塞障害の発症リスク軽減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の促進について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html
・簡単栄養&カロリー計算 「葉酸の多い食品と、食品の葉酸の含有量一覧表」
http://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/folic_acid.html