
「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになってきましたが、人生が本当に100年続くなら、いつまでも元気で自分らしく生きたいですよね。そこで今回は、自分の身体を自分で管理することで健康寿命を伸ばす、注目されはじめたばかりの「セルフメディケーション」についてご紹介します。
セルフメディケーションとは?
セルフメディケーションを直訳すると「自己治療」、つまり、自分で自分の病気やけがを治療するという意味になります。WHOによれば「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されており、普段から自分の体調は自分でセルフチェックして軽度の不調なら病院に行かず市販薬を飲んで家で養生しましょう、病気が悪化する前に自分でケアしましょうという考えです。「自分の身体を自分で管理すること」がセルフメディケーションなのです。
これは、膨らむ一方の国の医療費負担に歯止めをかける対策としても注目されています。
セルフメディケーションのメリット・デメリットとは?
セルフメディケーションのメリットとは、どんなことがあるのでしょうか?
まずメリットをご紹介します。
・日常的に体調管理をすることにより、未病を防ぐ
・自分の身体を大事にするようになる
・薬の知識が身につく
・医療機関での手間と時間が節約できる
・新たに導入された「セルフメディケーション税制(医療費控除)」を使って減税できる
・医療費削減に繋がる
次にデメリットをご紹介します。
・ある程度医療・薬の知識が必要
・自己判断を謝ると病状を悪化させることがある
・医療機関に行かないことで大きな病気に気づくのが遅れることがある
セルフメディケーションは、日頃から自分自身でサプリメントなどを飲みながら健康管理をし、体調不良の際には市販薬を飲み、それでも治らなければ医療機関でチェックを受けるというもの。つまり、身体に興味を持ち、健康や薬などのある程度の知識を持つ必要があります。うまくいけば風邪をひく機会が減ったり大病を防いだりすることにつながりますが、一方で、自分でケアしすぎることで重大な疾患を見逃す可能性もあるのです。
セルフメディケーションに過信と無理は禁物。不安や疑問は、必ず薬局の薬剤師に相談するか、医療機関で診察を受けましょう。
セルフメディケーションって、実際にどんなことをするの?
「お医者に行くまでもない、自分で治療が可能な軽度な不調」を一般用医薬品(OTC医薬品と呼ばれています)などで、自分で手当することがセルフメディケーションですが、具体的には、どんなときにどんなことを行えばいいのでしょうか?
花粉症で目がかゆい、鼻水が出る
花粉症の症状を抑えるために、抗ヒスタミン剤の成分が入った点鼻薬や目薬を使うことはセルフメディケーションです。
2日酔いで胃が調子わるい
明らかに2日酔いで胃の調子がおかしい時に胃薬を飲むことはセルフメディケーションです。しかし、症状が長く続く場合は医療機関で診察を受けましょう。
偏頭痛が定期的にある
頭痛持ちの人が、普段と同じ症状が現れたときに頭痛薬を飲むのもセルフメディケーションです。
ほかにも虫刺され、擦り傷、軽度の打撲、風邪、といった軽度の症状を抑えるときにはOTC医薬品を使ってセルフメディケーションを行うことができます。
そしてこれからのセルフメディケーションでは、生活習慣病の予防や、未病(血圧や血糖値などの数値が高いなど病気になる予備軍の状態にあること)の改善をしたり、予防したりすることに重点が置かれるようになっていくと言われています。
セルフメディケーションの注意点を知っておこう!
積極的に行うことを推奨されているセルフメディケーションですが、いくつか留意点があるのでご紹介します。
取り扱い説明書をきちんと読む
説明書にはその薬を安全に使用するための説明が書いてあります。1回何錠・1日何錠まで服用していいのか、服用する際は時間をどのくらい空けた方がいいのかなどの情報をきちんと読みましょう。服用を避けたほうがいい人など、さまざまな注意点が記載されているので、ほかの薬を服用している場合などは、薬の飲み合わせも確認しましょう。
薬剤師に相談する
わからないときは必ず薬剤師に相談しましょう。薬や医療への知識が十分でないまま薬などを選ぶと、望ましくない結果になる場合があります。「いつもと症状が違うけれど、多分この薬飲んでおけば大丈夫よね」という自己の判断はNG。少しでもわからないことがあるとき、症状が緩和しないとき、症状が長く続くときは、迷わず薬局の薬剤師さんに相談し、場合によっては医療機関で診察を受けましょう。
知らなきゃ損! 所得税と住民税が軽減される「セルフメディケーション税制」を活用しよう!
セルフメディケーションを行う大きなメリットのひとつに「セルフメディケーション税制」があります。
厚生労働省によると、以下のように概要が説明されています。
健康の維持増進及び疾患の予防への取組みとして一定の取組(*1)を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他親族に関わる一定のスイッチOTC医薬品(*2)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払った対価の額の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が8万8千円を超える場合には8万8千円)について、その年分の総所得金額などから控除する。
*1 特定健康診査、予防接種、特定健康診断、健康診査、がん検診
*2 要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く)(※1)
簡単に言うと、会社や自治体などで健康診断を受けている人が、セルフメディケーション目的で厚生労働省が指定しているOTC医薬品を1年間に12,000円以上購入した場合、申請することでその超えた金額分が上限88,000円まで所得税/住民税が減税されるという制度です。
セルフメディケーション税制を利用する際の注意点
・レシートを取っておこう!
利用する際の注意点としては、確定申告の際にセルフメディケーション税制対象の医薬品を12,000円以上購入したということを示す証明書が必要です。購入したレシートは1年間保管しておきましょう。
・従来の医療費控除とどちらかしか選べない
従来の医療費控除との併用はできませんので、自分の家で1年間でかかった医療費と比べて、自分にとって有利な方を選択しましょう。
セルフメディケーション税制が使える、OTC医薬品とは?
セルフメディケーション税制の対象商品にはマークが示されています。商品選びのとき、参考にしてみてください。
また、対象となる有効成分は平成29年9月27日時点で、84種類(※2)。対象医薬品は合計1,680品もあります(※3)。そのなかには解熱薬や鎮痛薬として使われる「イブプロフェン」や、胃薬に使われるH2ブロッカーのひとつ「ファモチジン」、口内炎のケアに使われる「トリアムシノロンアセトニド」、腰痛などの湿布薬などに使われる「フェルビナク」などがあります。
詳しくは、厚生労働省のホームページを確認してみてください。
▼セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧(全体版)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000206165.pdf
自分の体調管理もできて節税にも繋がるセルフメディケーションは、これから一般的になってくること間違い無し。みなさんもぜひ、はじめてみてはいかがでしょうか?
■出典
※1 厚生労働省 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
※2 厚生労働省 スイッチOTC医薬品有効成分リスト(平成29年9月27日時点)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197171.pdf
※3 厚生労働省 セルフメディケーション税制対象品目一覧 セルフメディケーション税制対象医薬品 成分名ごと品目数
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197972.pdf