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2019.07.19更新

吉村泰典先生に聞く 安心して子どもを産み育てられる社会へ

出産は女性にとって人生で最大ともいえるイベントです。妊娠中の体には大きなストレスがかかり、つわりの辛さがあり、出産には想像できない痛みを伴いますが、それを経験してこそ大きな喜びと感動があります。男性もぜひ妊娠・出産・育児を共に歩んで、その素晴らしさを自分の経験にしてほしいですね。子どもを産み育てていく人たちへ、産婦人科医で慶應大学名誉教授の吉村泰典先生からメッセージをいただきました。

妊娠中はケアされるとき

私が産婦人科医になったのは、お産のすごさに圧倒されたからです。女性は本当にすごいと思いました。生まれ変わったら医者になろうとは思わないけれど、もし医者にしかなってはいけないと言われたら、もう一度、産婦人科をやるでしょうね。

仕事をしている女性も、妊娠中はちゃんと病院に通ってほしいと思います。ちゃんと病院に行っていれば、早産が起りやすいかどうかもわかります。妊娠中で一番辛いのはつわりの時期です。人によって症状は違いますし、1人目はあっても2人目はなかったりと妊娠ごとにも違います。つわりの強い時期は仕事を休むことも必要です。しっかりと水分補給をして、ビタミンの補給も必要ですから、サプリメントを飲むことも大事です。

日本では合計14回ほどの妊婦検診があります。女性がこれほどケアされる時期はないでしょう。妊娠はある意味でのストレステストです。血液量が1.5倍に増え、体重も10㎏増え、体に大きな負担がかかります。尿糖が出たり、血圧が高くなり、いろいろな症状が出てきます。こうした変化から、将来の糖尿病や高血圧などに繋がることがエビデンスとしてわかってきています。だから、妊娠中のケアはとても大事なのです。ストレスに耐えられるのは女性ですから、男性にもよく理解してもらいたいですね。

男性にこそ育児をしてほしい

最近は多くの人が立ち会い分娩をするようになりました。陣痛の痛みに耐えられるのも女性だけです。男性にはとても耐えられないでしょう。最近は無痛分娩が増えてきています。痛みに耐えることがいいとは限りませんので、本人の希望を優先していいと思います。女性が一番美しい時期は子どもを産んだ後です。事業を成し遂げたようなあの素晴らしさは、男性には味わえない感覚です。

私は子育てほど難しいものはないと思っています。ですから、男性にこそ育児は大事です。掃除や洗濯なども含めて全部やったほうがいい。私は常々、育児経験を上司になる条件にしたらいいと言っています。子どもは、言うことを聞かないし、泣くし、怒るし、本当にたいへんです。育児の素晴らしさは、それが教育の一環であることです。育児をすることで自分自身が教育されます。私も育児によって成長しました。子育ては自分育てなのです。妊娠・出産も含めて子育ての一環です。男性にも楽しんでほしいですね。

そのために、今、必要なことが妊活を始める前からのプレコンセプションケアです。その一つが葉酸を摂ることだと思います。胎児の健康な発育のために葉酸が重要であることは、厚生労働省もアナウンスしているところです。しっかりとしたエビデンスがあるのですから、葉酸をより積極的に摂取できるような環境が重要です。

女性と子どもを支える国と社会づくり

日本では少子化が急速に進んでいます。晩婚晩産で子どもをつくる機会に恵まれなかったり、つくらない選択をする女性も増えています。それは、女性の問題ではなく日本社会の、ひいては国の問題です。日本の社会は、子どもを産み、育てにくい環境にあると思います。政府の支援や国の制度も十分であるとは言えません。

最近は選択的シングルマザーという言葉があり、自ら選んでシングルマザーになる人もいます。必ずしもシングルマザーをよしとするわけではありませんが、日本の異常な点は、結婚したカップルの子どもが98%で、婚外子は2%しかいないことです。これはシングルマザーや結婚していないカップルにとって、子どもを育てにくい社会であることに原因があります。誰もが安心して子どもを育てられる社会環境をつくらなければ、少子化に歯止めをかけることはできません。

女性と生れてくる子どもたちの幸せのために、妊娠・出産・育児を総合的に支援できる社会の実現に、私達、産婦人科医も働きかけていきたいと思います。

吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。1975年慶應義塾大学医学部卒業。
米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長など、数々の学会理事を歴任。
日本における不妊治療の第一人者として数多くの患者の治療にあたる。
2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所を設立。
女性が安心して子どもをつくり育てられる社会の形成を目指して尽力している。
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