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2020.09.25

隠れ栄養不足に注意、免疫力は食事で高める

新型コロナウイルスの流行でソーシャルディスタンスやマスク着用、手洗いなどの感染症対策が新しい日常になりました。あわせて、感染症から自分の身体を守るために免疫力を高めることの重要性も再認識されています。しかし、現代人は免疫力を高めるために必要な栄養が不足しているかもしれません。

低体温とやせすぎで免疫力が低下

2020年に世界を襲った新型コロナウイルスは、COVID-19と名付けられ、多くの感染者を出しました。COVID-19による感染症は、鼻水、咳、軽い発熱などの風邪と似た症状でから始まります。風邪は一般的に2~3日で治りますが、COVID-19による感染症は発熱、頭痛、咳、倦怠感が4~5日間続き、消化器症状を伴うことがあります。さらに重症化すると、1週間後には肺炎を起こして呼吸が苦しくなり、肺機能が低下した場合には人工呼吸器が必要となります。

COVID-19の特効薬やワクチンはまだありません。しかし、人にはあらゆる病原体に対しての感染防御能があります。細菌やウイルスの体内への侵入を防ぎ、侵入した病原体を分解・破壊・排除するのが免疫です。この感染防御能が働くために大事なものが栄養です。

しかし、現代人は、偏った食事やダイエットで、栄養不足に陥っているかもしれません。急激にやせるダイエットを続けていると、血液中のアルブミンが減少して低タンパク血症になる危険性があります。低タンパク血症になるとウイルスや細菌の侵入を防ぐ抗体の働きが悪くなり、インフルエンザや食中毒などの感染症にかかりやすくなってしまいます。

また、栄養状態が悪くなるとエネルギーが不足して体温が低くなり、免疫力も低下します。アフリカなどの発展途上国で栄養不良の子どもたちが感染症で亡くなるのは、体温が低く、低タンパク血症を引き起こしているからです。栄養状態が良好なら問題にならない腸内の常在菌が活発に動きはじめて下痢などを引き起こしてしまうのです。

高タンパク食でまず肺炎リスクを下げる

COVID-19感染後、重症化しないためには、十分な抗体ができるまでの1~3週間の肺炎・高熱に耐える感染防御能を持つことです。肺炎発症のリスクについては、かつて65歳以上の肺炎患者の血清アルブミン値とBMIを調べたところ、低タンパク血症(アルブミン3.5g/dl未満)が11~20倍、BMI(体重kg÷身長m×身長m)18未満が2~3倍の高リスクであることが、日本老齢医学会の公式英文誌『Geriatrics & Gerontology International』に報告されています。

今回、中国武漢でも、血清アルブミンが少なく白血球が少ないことは、生命へのリスクが高いことが判明しています。対策は高タンパク質食を摂ることですが、高齢者はタンパク質の消化能と同化能が低下しているため、半消化態タンパク質のチーズや味噌などロイシンの多い食事が適しています。

体温は1℃上昇すると13%代謝が増えるため、発熱が起きることでエネルギー消費量が高くなります。そのため、肺炎に関してはやせた人よりも肥満者の方が死亡率が低く、低血糖は肺炎死亡率を高めることがわかっています。肥満が重症化リスクが高いのは、肺炎そのものではなく、肺炎によって引き起こされるサイトカインストームだとみられています。

糖質も必要、ビタミン・ミネラルで代謝促進

現代の日本人の食事は、カロリーが十分でも栄養が足りていない可能性があります。タンパク質、脂質、炭水化物(糖質)、ビタミン・ミネラル、食物繊維をバランスよく摂ることが免疫力アップには欠かせません。

新型肺炎流行下では、とくにタンパク質と糖質、ビタミンの摂取が推奨されています。タンパク質は筋肉や血液、骨をつくり、糖質(炭水化物)はエネルギーになり、ビタミン・ミネラルは、体温の調整など体の生理機能を維持し、エネルギーや体をつくる代謝にかかわります。

中国での新型肺炎に対する栄養指導書には下記の内容が含まれています。

・十分なエネルギーを糖質で補給するため、米、小麦粉等を毎日250~400g摂取

・赤身の肉、魚、卵、乳製品等の高品質のタンパク質食品を毎日150~200g摂取

・総脂肪エネルギーは総食事エネルギーの25~30%

・野菜を毎日500g以上

・果物を毎日200~350g

 

たいへん多い量なので過剰にならない範囲でサプリメントも活用するといいでしょう。日本ではメタボリックシンドローム予防や美容のために減量や低糖質食が流行っていますが、新型肺炎の流行下では中断したほうがよさそうです。感染防衛機能は肥満者と十分な栄養を摂っている人で高いことがわかっています。規則正しい生活と適度な運動を取り入れて免疫力を高めましょう。

<参考図書・URL>

 

『あなたの健康寿命は「葉酸」で延ばせる』(香川靖雄著・ワニブックス刊)

 

『食べる量が少ないのに太るのはなぜか』(香川靖雄著・幻冬舎刊)

 

女子栄養大学栄養学科研究所ブログ 新型コロナウィルス(COVID-19)を防ぐ栄養学

https://www.eiyo.ac.jp/ions/?p=3674

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