
日本では65歳以上の認知症患者の数が急増し、2025年には高齢者の5人に1人に達する予測され、高齢者介護は深刻な課題となっています。一方で、高齢者の認知症が減少している国があります。意外かもしれませんが、アメリカやイギリスなどの欧米諸国です。その背景には、何かしらの生活習慣が関係しているとみられ、世界的に研究が進められています。
日本では高齢者の5人に1人が認知症へ

超高齢化社会の日本では、認知症高齢者が2012年時点で462万人と推計され7人に1人が認知症の時代に突入しました。さらに、このままいくと2025年には約700万人まで増加して、65歳の高齢者の5人に1人に達するとみられています。
日本で認知症患者が増加しているのは、単純に高齢者の数が増えているという理由だけではありません。認知症の診断と治療が難しいことも要因の一つです。なぜなら、認知症は脳の神経細胞が破壊される病気で、その原因疾患は多種多様で症状も複雑に絡み合っているからです。
認知症患者の増加を食い止めるため、2008年に国が「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」を発足して以来、さまざまな調査研究や取り組みが行われてきました。日本のみならず世界中で認知症の研究が進められていますが、今の医学では、一度失った脳の神経細胞をもとのように取り戻すことはできません。若いうちから食生活や生活習慣を見直し、認知症にならない体づくりをすることが大切なのです。
イギリスとアメリカでは認知症が減少

日本では増え続けている認知症ですが、驚くことに減少している国もあります。
その一つがイギリスです。2013年、イギリスでは20年間にわたり同じ地域で認知症有病率を調査した結果、75歳のすべての年代で2~3割減少したと、医学専門誌『The Lancet』に報告されました。これは、イギリスでは2005年から、脳卒中、心臓病、糖尿病、腎臓病などの生活習慣病の治療が認知症の予防につながるとして、国をあげて認知症を減らす取り組みがされてきた成果だとみられています。
アメリカでは、まず脳卒中死亡率が大幅に減少しました。これは、1990年から3億人のアメリカ人を調べて導き出された脳卒中の死亡率統計で、2002年にアメリカ心臓協会が発行していた論文誌『Circluration』で報告されました。脳卒中は、日本で死因の第3位を占め、寝たきりなどの要介護者の原因の3割以上を占めるといわれ、社会的負荷の重い疾患となっています。
<参考図書・URL>
厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)概要
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/kaitei_orangeplan_gaiyou.pdf