
免疫力は加齢にともない低下しています。20歳頃にピークを迎え、40歳では50%まで低下するという報告もあります。免疫力は細菌やウイルスから身体を守るだけでなく、糖尿病や高血圧などの病気の予防・改善にも働く力があるのです。生活習慣のちょっとした改善で免疫力を取り戻しましょう。
免疫力は健康寿命にもかかわっている

「免疫力」とは、細菌やウイルスなどの病原体の侵入を防ぎ、侵入してしまった異物は攻撃して排除する力です。さらに、最新の研究によって免疫には健康寿命にも大きなかかわりがあることがわかってきました。
たとえば、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、認知症、肺炎、肩こり、腰痛、アレルギー、がんなどの病気にも免疫が関係しています。つまり、免疫力を上げることができれば、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防・改善につながり、将来、認知症になるリスクを下げることができるというわけです。
免疫力の低下は加齢だけが原因ではありません。過食、運動不足、睡眠不足、ストレスなどでも低下します。つまり、生活習慣病の予防が免疫力アップにもつながり、ひいては健康寿命を延ばすことになるのです。
体温を上げれば免疫力はアップする

体温を1℃上げるだけで、免疫を5~6倍アップさせることができます。逆に体温が1℃下がると、免疫力は3~4割も低下してしまいます。その理由は、体温が上がると血液の流れがよくなり、リンパの流れもスムーズになるからです。リンパ球は白血球の一種で免疫細胞を多く含んでいます。だから、血流がよくなれば免疫が働きやすくなり、免疫力がアップするというわけです。
理想的な体温は36.5℃~37℃とされています。体温が下がれば、血液とともにリンパの流れも悪くなります。35℃台は要注意。体中が冷えた低体温状態では、いくら免疫力を上げようとしても上がりません。風邪をひいたときに熱が出るのは、体温が高くなることで白血球(リンパ球)の動きを高め、細菌やウイルスを攻撃する力を強めているからです。
体温アップに有効な方法は食事と運動です。運動を習慣化するのは難しいかもしれませんが、食事は日々の心がけで改善することができます。免疫力をアップする食べ物がよく話題になりますが、それだけを食べればいいというわけではありません。栄養バランスのよい食事を、朝・昼・夕の1日3食を摂ることが免疫力アップの基本です。
熱の材料になる栄養素は、タンパク質、脂質、炭水化物です。ビタミン・ミネラルも欠かせません。整腸作用のある食物繊維も免疫力アップにつながります。不足しがちな栄養素はサプリメントで補うのもいいでしょう。
入浴・睡眠・朝食で生活リズムを整える

入浴も体温を上げるために簡単にできる習慣です。なかには、湯船につからずにシャワーだけで済ませるという人もいるかもしれません。しかし、それでは体が十分に温まらず、逆に冷え性や低体温を招くことにもなりかねません。40℃のお湯に10分間つかると体温が1℃上がります。
夜の入浴で睡眠の質もよくなります。体の深部体温が下がることで眠りに就きやすくなるので、就寝の1時間ほど前に入浴するのが最もよいタイミングとされています。
朝、起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びることも、免疫力アップにつながる習慣です。1日24時間の地球の自転と体内時計のズレが大きくなると、免疫システムと関わりの深い自律神経が乱れはじめます。生活リズムが崩れると、風邪をひきやすくなったり疲れやすくなるのはそのためです。体内時計のズレをリセットするのが太陽光なのです。
朝食を食べることでも体内時計がリセットされます。また、朝食は起きたばかりの体を活性化するために大量の熱量を発生させます。朝食にタンパク質とビタミン・ミネラルを含む栄養バランスのよい食事をしっかり摂って、一日をスタートさせましょう。日中は活動して夜は眠る。人間にとって自然な生活リズムを整えることが、免疫力をアップさせ、健康寿命を延ばす秘訣かもしれません。
新型コロナウイルス感染症の流行で、体温を測ることが習慣になった人も多いのではないでしょうか。知らない間に体温が下がって疫力が低下することがないように、毎日の検温は続けたいものです。
<参考図書・URL>
『あなたの健康寿命は「葉酸」で延ばせる』(香川靖雄著・ワニブックス刊)
『それでは実際、なにをやれば免疫力があがるの?』(飯沼一茂著・ワニブックス刊)